声優史学

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μ's GO→GO! Love Live ~Dream Sensation~(その1) -奇跡それは今さここなんだ みんなの想いが導いた場所なんだ-

さる1/31,2/1の2日間、μ's GO→GO! Love Live ~Dream Sensation~(通称「5th」)に参加した。
本当に素晴らしいライブであった。

 

参加した方々の感想を伺うと「言葉にならない」と返ってくることも多く、それはそれで一種の真理を突いているのだが、僕は、敢えてこれを自分自身の言葉において解き明かし、伝えるという、無理難題に挑戦してみようと思う。それがかつて僕が"文"の学府を修めたことに対する、というよりはあの学んだ場に対する、せめてもの恩返しになればと考えている。

なお、本記事を書くに当たって、僕が以前に書いたラブライブ!関係の記事も、併せて読んでいただけると幸いです。本記事も、過去に触れたことは適切に端折りながら進めていきます。

 


2/8 2/9 ラブライブ!μ’s→NEXT LoveLive!2014 ~ENDLESS PARADE~ 感想その1 - 声優史学


2/8 2/9 ラブライブ!μ’s→NEXT LoveLive!2014 ~ENDLESS PARADE~ 感想その2 - 声優史学


【過去記事再掲載】聖地巡礼と声優イベントと~創作を現実に降臨させる想像力 - 声優史学


【過去記事再掲載】2013/3/10 ラブライブ!シークレットイベント μ's in Wonder Zone - 声優史学


僕はかねてから『ラブライブ!』という作品が2次元と3次元とを上手に交錯させ、我々を夢中にさせてきたことについて主張してきた。そして、今回のライブも、それを非常に上手に表現していたといえる。全体の構成はアニメ2期を中心に据えつつ、それでいて衣装、ステージセット、小道具、さらには演者のパフォーマンスに至るまで、本当に我々の期待のはるかに上を行くクオリティであった。Love wing bellではまさにアニメで描かれた光景をキャストたちが完全といっても良いほどに見事に再現していたし、ステージセットはラブライブ!本戦をモチーフにしたセットだったし、果てはアンコールアニメでキャラクターに"中の人"の自己紹介を再現させたり、細かく挙げていけばキリがない。


Wonderful Rushに寄せて

僕が初めてラブライブ!を知ったのは2012年3月のブシロードカードゲームライブ(愛知)であるが、本格的に夢中になったのは同年10月ごろ、Wonderful RushのPVを目にした時からである。曲もPVもとても疾走感があり、であって秋葉原羽田空港といった知っている風景が登場する。いや、単に登場させているだけにとどまらない。滑走路にステージを建てたり、落ちサビで噴水を炊いたり、あんな演出は実在のアイドルでは到底無理だろう…!これが僕が実在ではなく、敢えて非実在の、創作のアイドルを推す理由たるのだ…!と、あっという間に音ノ木坂の世界にのめり込んでしまった。*1

そんな僕にとって想い出深い曲であるWonderful Rushを、今回の公演では両日ともに聴けて本当に良かった。2日目はさすがに端折られると思ったけど、結果としてやってくれた。この曲を聞くと卒論に煮詰まってはPVを流して家で一人踊っていたあの頃を思い出して一人泣いていた。

 

・2次元と3次元の相互依存と共生

巧みに2次元と3次元を交錯させていることがラブライブ!のライブイベントの魅力であることは先に述べたが、これをさらに細かく分けると"2次元を3次元で再現する"手続きと"3次元を2次元で再現する"手続きの2種類に分けられる。

先述したとおり、今回の5thは、アニメのストーリーをなぞる形で進められていた。これは紛れも無く"2次元→3次元"というプロセスである。先述したアニメーションPVの振り付けの再現、飯田里穂さんのドレス姿、ステージの形や照明機材、どれもがアニメの再現であるし、多くのファンはこの"創作世界を現実で再現する"という夢の様な時間を求め、さいたまスーパーアリーナへ足を運んでいるのだろう。
しかし、その中にごく一部ながら、"3次元から2次元へ"という、いわば逆輸入的なプロセスが含まれている。先にも述べたアンコールアニメーションで、声優さんの自己紹介をμ'sのキャラで再現したのである。単に自己紹介にアニメ映像をつけただけでなく、キャラクターに中の人の仕草を再現させたのだから、本当に驚きであった。*2

 

このような2次元、3次元の相互依存の関係を作り出し、現実世界と創作世界との区別をどんどん曖昧にしていったことこそが、5thライブ参加者の多くが余韻を数日間引きずるほどの体験をさせる原因となったのではないだろうか。そして、この不思議な感覚を求めて、多くの人が夢中になるのではないか。*3

 


さて、様々な御託を並べてきたが、以上の要因を述べてもラブライブ!の古今の商業的成功を説明するにはまだピースが足りない。
2次元と3次元とを交錯させる手続きは、オタク特有の想像力に支えられているため、オタクではない者による支持を説明するには物足りないと僕は考える。オタクによる支持の別レイヤーで、近年の中高生に特有な、カジュアルにオタク文化を楽しむ層(僕はこういった存在を"マイルドオタク"とでも呼びたい)による支持が非常に大きかったのではないか。*4

 

彼らにとって(もちろんオタク層にとっても)拠り所となっていた、もうひとつの重要なテーマである"成長"という軸については、次の記事で詳しく述べていこうと思う。

*1:余談だけれども、その衝撃的な出会いの数カ月後に描き上げた僕の卒業論文は、秋葉原と神田と神保町の間あたりに存在するキンコーズ淡路町店で製本された。

*2:4thではオープニングの演出で、スクリーンに客席を映しながらその上でμ'sのキャラクターが踊っているCGをはめ込むという演出がなされていたが、これも同様の手続きである。詳細は上記に紹介した4th感想記事で述べているので、ここでは割愛する。

*3:もっとも、このような手続きは何もラブライブ!に特有のことではなく、いわゆる現実の土地を背景にしたアニメを制作し、ファンがその土地を探訪する"聖地巡礼"もこのような想像力が元になっていると言える。声優とアニメとの関係でいえば、『Wake Up, Girls!』『アイドルマスター』等のコンテンツで、声優のパーソナリティをキャラクター設定に取り組む手続きがされている。詳細は割愛するが。

*4:詳細な分析は行わないが、ブシモで展開されているスマホアプリ「スクールアイドルフェスティバル」のブレイクを支えたのがこのような層だと僕は推測している。